Beaconの命運は電源予算で決まります。有線センサーと違い、Bluetooth Beaconには毎月技術者が訪問するわけではないため、電池の選択が最も重要なハードウェア決定です。本稿ではボタン電池の選定、具体的な寿命モデル、そしてエネルギーハーベスティングによるバッテリーレス設計の限界を解説します。
なぜ電力が制約になるか
Beaconは寿命の99.9%をスリープで過ごします。重要なのはアドバタイジングの突発のみです。数100マイクロ秒間、無線が5〜15mAを消費します。あとは漏れ電流と低消費タイマーです。
ボタン電池の選定
| 電池 | 容量 | 直径 | 用途 |
|---|---|---|---|
| CR2032 | 225 mAh | 20 mm | 薄型、2年未満 |
| CR2450 | 620 mAh | 24 mm | 一般用 |
| CR2477 | 1000 mAh | 24 mm | 長寿命5年以上 |
公称電圧3.0Vですが、負荷と消耗で低下します。内部抵抗は新品10Ωから寿命末30Ω超へ上昇し、10mA送信で2.9Vから2.6Vへ低下します。昇圧コンバータで無線を3.0Vに安定させ、最後の20%の容量を引き出します。
寿命モデル
平均電流はデューティ比の和です。
I_avg = I_adv * (t_adv / T) + I_sleep * (1 – t_adv / T)
例:t_adv=0.5ms@12mA、間隔T=500ms、I_sleep=1.2µA。
duty = 0.5e-3 / 0.5 = 0.001
I_adv_avg = 12e-3 * 0.001 = 12 µA
I_avg = 13.2 µA
CR2032の225mAhでは:
life = 225 / 13.2µ = 17045 h = 1.95年(理想)
70%補正 -> 約1.4年
間隔を1000msにするとI_adv_avgが半減し、寿命は3年近くに延伸します。
エネルギーハーベスティング
| 源 | 屋内密度 | 備考 |
|---|---|---|
| 環境光 | 10〜100µW/cm² | PV+MPPT |
| RF | 1〜10µW | 都市のみ |
| 熱電 | 数µW/ΔT5°C | 体/配管 |
| 圧電 | 押下でmJ | イベント駆動 |
バッテリーレスBeacon
コンデンサのみのBeaconは、電荷が溜まった時だけ送信します。寿命は無限ですが周期性は失われます。
実践チェックリスト
- 0°C以下で容量半減を考慮し30%補正
- 2.0Vで遮断し漏液防止
- 昇圧で3.0V安定化
- 検知SLAが許す最長間隔を選ぶ
適切なBeaconはCR2477と1秒間隔で現実的に5年以上動き、小さな太陽電池を加えればバッテリーレスに近づきます。